人生最悪の旅

映画みたいな話をしますが、実際に起こったことを書きます。いい内容ではありませんが、恥も承知です。書いてストレス発散させてください!


ドイツに来てもうすぐ半年。
7月後半に期末テストを何とか終え、夏休みに入ってからはドイツ語の講座に出ていました。
青年海外協力隊の友だちが遊びに来てくれたり、以前一緒に働いていたウガンダ人がドイツまで遊びに来てくれたり、楽しいこともありました。


そして8月終わりにドイツ語が一段落したので、旅に出ることを決めました!どこでもよかったのですが、せっかくならドイツから出て他のヨーロッパ諸国も見てみたいと思い、
ドイツ→ベルギー→フランス→オランダ、そしてドイツへ帰ってくることを予定しました。


日本から行けば時間もお金もかかるヨーロッパも、ドイツからバスや電車で移動すれば、ほんの数時間。バスなら20~40€(3000~6000円)もあれば、国を跨げます。


まずベルギー。首都ブリュッセルは美しい街で、王室を見学できたり、世界3大がっかりともいわれる小便小僧を見ることができました。確かに小さくて迫力ありませんが、朝から晩まで、ずーっと人だかりが小便小僧を撮り続けていました。
ワッフルやチョコレートがおいしく、夕食はミール貝とフレンチポテトにビールという組み合わせが最高でした。

芸術が盛んな町で、みんなが一度は見たことのあるスマーフやタンタンを始め、多くののマンガが生まれた地です。
街を歩くと、壁画にたくさんのキャラクターを発見することができます!


スマーフ



タンタン



クイック・エ・フリュプク



そしてフランス。ブリュッセルからバスで約4時間、パリへやってきました。
ブリュッセルの建築物、町並みには感動しましたが、その何倍も都会で、町中に世界遺産級の建物が並びます。
パリ市内には観光バスが走っていたので、エッフェル塔シャンゼリゼ通り、凱旋門ルーブル美術館など、充分に満喫しました。

エッフェル塔前では、たまたま東北OECDスクールの高校生が、日本の文化、東日本大震災について語ったり、着物を着ていたり、素晴らしいイベントを行っていました。2年以上も前から計画していたようです。






ここまではパーフェクトな素晴らしい旅ですが、パリ3日目の夜。その日も1日中歩いたので、帰宅途中のスーパーでワッフルとジュースを買って、気分転換のために駅前にあったベンチに腰掛け、1日中背負っていたリュックを自分の右横に置き、リラックスしていました。

すると南米系の男が話しかけてきました。彼は英語をほとんど話せなく、身振り手振りで一生懸命何かを伝えようとしていました。
パリはあまり英語を話せる人がいないのですが、よく話しかけられます。
「またか。」と思いながらも何を言っているのか真剣に話を聞いていました。男は立ち上がってサッカーをしているような動きをしていました。男は自分の左側に回り、まだ何か一生懸命に話していました。

数十秒後かと思いますが、男は急に話すのを止め、「楽しかった!バイバイ。」と言って後にしました。
「変な奴だったなー」と思って視線を戻したら、リュックが消えていました。



「………。」

一瞬、頭が真っ白に。



ちょっと休んだらホテルに戻ってすぐにシャワーを浴びようと、身に着けていたものをほとんどリュックに入れていたのに、リュックは跡形もなく姿を消しました。
手元に残ったのは、食いかけのワッフルと空になったペットボトル。そしてポケットにかろうじて入っていた携帯電話のみ…。

このベンチは大きな半円状になっていて、背もたれは自分の身長くらいありました。
自分の右側には誰もいなかったので、間違いなくあの男が自分を惹きつけている間に、背もたれの後ろから自分のすぐ右側にあったリュックを盗ったんだと思います。気付かなかったことが情けなくて仕方がない…。


「さっきの男…!!」


そう思って近くを探すと、まだあの男が1人で歩いていました。
今行くべきか、奴らの仲間が合流したところで行こうか迷いましたが、気付いたらもう男の腕をつかんでいました。当然のように知らんぷりされ、怒鳴っても「英語わかんない。」と言われイライラするし、最悪でした…。

相手を説得しようと両肩をつかみ、話しかけ続けました。でもずっとシラを切られるので、自分でも何をやったのかよく覚えていませんが、

「警察呼ぶぞ。」と逆に言われました。
「ふざけんな!」と思いますよね。


ふと怒りが少し落ち着いたとき、客観的に自分を見ている自分に気付きました。
気がつけば人気のない裏路地。たぶん周りから見れば、中国人みたいな男が現地のフランス人に掴みかかって何か叫んでる。みたいな状況でしょう。

らちが明かないので相手から手を放そうとしたとき、男の身に着けていた何かに手が当たりました。革のケースに入った固形物で、ナイフか何かだったかもしれません。暴行したら自分が捕まるし、こんなやつに刺されたくないし、ましてや自分を証明するものは何もないし、冷静に警察に行こうと思うことができました。
そのまま男を警察に連れていくこともできず、むかつくけど、今は命があることに感謝しなければなりません。


警察署に行くと、
「また日本人か。」と言わんばかりに、日本語の被害届を出してきました。かなりの日本人が被害に遭っているようです。
記入しているときに、逮捕されて手錠をかけられた男が入ってきて、何やら騒いでいましたが、当然あの男ではなく、全く頭に入ってきませんでした。


まさにボー然。


無くしたものが多すぎて、怒り、不安、情けなさ、いろんなことが頭をよぎりました。

警察には3時間くらいいて、犯行の様子を説明し、リュックの中身を説明したり、犯人の顔を書いたり。しかし何だか真剣みの無い警察官ばかりだったので、期待してません。
「このケースは99%戻ってきませんねー。ハハハー。」みたいな対応だったので、完全に諦めました。


ホテルに戻ったのは夜中2時くらい。同じ部屋で仲良くなっていたメキシコ人とイタリア人4人がバーに連れて行ってくれ、慰めてくれました。
話を聞きつけたイラン人にも慰められ、そして同じような手口で携帯電話を盗られたアルゼンチン人とも仲良くなり、変な団結力がうまれました。笑


状況を知ったホテルのスタッフは、インターネットを無料で使わせてくれ、クレジットカードやキャッシュカードを止めることができましたし、仲良くなったメキシコ人に100€くらいを借りて、とりあえずドイツまで戻ってくることができました。

持ち物は携帯電話と借りたお金、そして警察署で発行してもらった被害届のコピーのみ。近所のスーパーへ行くときでさえ、もう少し重装備です。オランダへは行けませんでしたが、そんなこと言ってる場合じゃありません。

帰りのバス内ではクレジットカード会社の人とやりとりしているときに電話の残高が無くなり、バス内マイクで携帯を貸してくれる人を募って借りたり…ヒヤヒヤしましたが、何とかなるもんですね。ずっと脳が冴えていて、2日間くらい寝れませんでした。


これからパスポートや学生証を再発行したり、証明書を取り寄せたり、日本にいる家族にも迷惑をかけることになりそうですが、またもとの生活を取り戻せるようにしていきます。
大切なものが無くなって、一度リセットされたような気分です。


旅はいつも自分を成長させてくれますが、今回のは相当キツイ。未だにイライラすることはありますが、旅を通してたくさんのいい出会いがあったことには感謝したいと思います。

自分のリュックを盗んだ人も、生活に相当困ってて仕方なくやったんだろうし、自分の使う予定だったお金、愛用していたiPodやカメラで、誰かが幸せになっているんだろうと思いたいです。

アフリカで過ごしたという自信が、実は過信だったことに気付かされました。


今回助けてくれた、心の広い友だち。自分も彼らのように、困った人がいたら率先して助けられるような人にならなければと、感心させられました。

ということで、こんな話で申し訳ありませんが、書いたり話すとすっきりしますね。旅で撮った自慢の写真をお見せすることができませんが、勘弁してください。この経験も、いつかは笑い話として語りたいです。

パリへ行く予定のある方、気をつけてください!


Ichimasa