子どもから学ぶこと

フィリピンから帰国し、1週間ほどしてからアルバイトをすることになりました。最後にアルバイトをしたのは大学生の時に居酒屋の店員をやった以来で、実に8年ぶり。
これまでの経験を生かして、世の中に役立つように。とか考えていましたが、なんと舞台は保育園です。宮崎県延岡市に、「くまた保育園」という施設があるのですが、そこで親戚が働いていて、仕事をせずにヒマそうにしている自分に白羽の矢が立ちました。

この保育所には児童館が含まれており、夏休み期間中である小学生の受け入れをしていて、人手が必要とのことでした。特に共働きしている夫婦には、とても助かる施設です。
保育士でもないし、全くの畑違いである自分に何ができるか分かりませんでしたが、子どもと遊んでくれたらそれでいい。と言われたので、引き受けることにしました。フィリピンに行っていたので、引き受けられた期間はたった1週間でしたが、たくさんの思い出を作ることができました。


初日。
面接も何もなく、突然侵入してきた変なオッサンだと思われると困るので、まずは職員室で園長先生に挨拶しました。そこで履歴書を渡し、早速仕事スタート!後から分かったことですが、園長先生は面接もせずに、特例で自分を受け入れてくれたので、どんな人が来るか、とっても不安だったそうです。
それはそうですよね。海外にいたという髭面のオッサンが急に現れて、子どもたちに何か仕出かしては園長先生の責任ですから。いい人だと園長先生を説得してくれ、声をかけてくれた親戚に感謝です。



さっそく児童館を訪れてみると、朝の点呼をしていて、朝の会が始まりました。そこで、自己紹介をしました。子どもたちは日によって変わりますが、全部で30〜40人います。その目はキラキラと輝いていて、興味津々に自分の顔を覗き込んできました。自己紹介を終えると、質問タイム。みんなの手が下がることは無く、好きな食べ物、色、スポーツ、趣味、国とか。中には、「彼女は?結婚は?」と聞いてくる生徒もいて、子どもってこんなことを聞きたいんだなーと思いながら1つ1つ回答しました。


ちょっと打ち解けると、早速始まりました。コンクールに応募するためにヒマワリのちぎり絵を作ったり、学校の宿題をする子、本を読む子に外で走り回る子。40人の子どもを相手にするのは大変なことです。スポーツが好きだということは伝えていたので、バスケットボール、ドッヂボール、サッカー、キックベース、一輪車。いろいろとやりました。
みんなは、「ゆうすけ先生!!」と呼ぶので、とても違和感がありましたが、最後の方では、自分でも「先生はね…」のような話し方になっていて、ほんとの保育士になった気分も味わえました。何年ぶりにやったか分からない、鉄棒、鬼ごっこ、色鬼、トランプのババ抜き。何だか新鮮に思えて、楽しかったです。


児童館は、教育の場。壁の張り紙に目がいきました。「5S活動!」。
ウガンダに居たときにも推奨していた 5S。こんなに幼い頃から整理整頓を意識している日本人って、やっぱりすごいなーと感心しました。なんとなく身についてる5Sの心は、学校の先生たちのおかげでもあります。


昼食は、おにぎりを持参すればおかずを準備してくれ、子どもたちのグループに溶け込んで、小さい子ども用のイスに座りながら食べました。

午後は、保育園近くを流れている川に遊びに行きます。この川遊びは特に危険なので、一層気合いが入りました。遊びたい気持ちもありますが、監視役として、定期的に人数を確認しなければなりませんでした。


自分が参加したのは夏休み最後の週だったので、特にイベント尽くしでした。イベントを企画する先生たちは、やっぱり大変です。
近所のお年寄りと一緒にボーリング大会を開催して交流をしたり、肝試し、プレゼント抽選会、花火大会、そうめん流し。どれも子どもたちが喜びそうなイベントばかりです。避難訓練もありました。


プレゼントを1人1人取りに行く、抽選会。


花火大会。


そうめん流し。竹のセッティングも手伝いました。


流れてくるのは、そうめんだけではありません。野菜や果物、ゼリーも流れてました。流れてくるものを取ろうと、必死になっている子どもたち。


そんな中、せっかくなので時間をもらって、経験談を語らせてもらう機会をいただきました。これまでに、普通の人では滅多にできない経験をしてきているので、特に子どもたちとその思い出を共有したかったからです。保育園側は快諾してくれました。準備にあまり時間を取れなかったものの、約15枚のスライドを30分くらいかけて、ゆっくり話しました。園長先生も、忙しい中、時間を割いて聞きに来てくれました。
 
話したかったのは、先進国のことではなく、やはり途上国のこと。その方が、如何に自分が恵まれている環境で育っているか、訴えかけることができると思ったからです。


こんな感じの、子ども向けスライドです。


たくさん写真を見せた後、最後のスライドにはメッセージも込めました。


1) いろんなことにちょうせんしてください。(しっぱいしても、だいじょうぶです。)
2) ゆめをもちましょう。
3) あたりまえだとおもわないでください。(でんき、すいどう、がっこう、たべものなど)
4) ことばをだいじにしましょう。(ありがとう。ごめんなさい。など)
5) であいをたいせつにしましょう。(ともだち、せんせいなど)


このプレゼンの後に子どもたちが1人1人感想を言ってくれたのですが、衝撃を受けた子どもが多く、恵まれてる環境にいるということが分かってくれたようです。自分なんかの言ったことを真剣に聞いてくれ、素直に受け入れてくれる子どもは純粋で可愛いなーと思いました。




また、これまで行った国の通貨を見せたかったので、きれいにファイルして、見てもらいました。「先生大金持ちー!」と言われ。そんな純粋さも好きです。笑



子どもたちは、怒られることはあっても、みんな先生のことが大好きです。最終日に、転校してしまう子がいたのですが、夏休み期間お世話になった先生に手紙を書いていて、先生の涙を誘っていました。1ヶ月前に通い始めた当初は、友だちに暴力を振るう問題児だったそうですが、この夏休み期間で大きく成長したようです。今では、そんな姿が全く想像できないくらい、落ち着いてニコニコした子でした。

改めて、子どもの成長スピードの速さ。それから、教育の大切さを感じた瞬間でした。

保育士である親戚は、子どもの発言や態度を見聞きするだけで家庭環境が分かるらしく、まさにプロフェッショナルだなーと思いました。日本では軽視されがちな、保育園や幼稚園の先生たち。それでも、先生たちは大好きな子どもたちのために、全力でぶつかって、怒ることもあれば、たっぷり愛情を注ぐこともあって、素敵な仕事です。全く異なる分野の仕事、人に触れることで、自分もまた一歩成長できたかな?と思います。
この経験は、必ずどこかで生きてくるでしょう。
たった1週間でしたが、変な髭面のオッサンがこんなこと言ってたなーとか、一緒にこんな遊びしたなーとか、少しでも記憶に残ってくれたら嬉しいです。



また機会があれば、この仕事を引き受けて、子どもたちとたくさん触れ合いたいと思います。その時までに、自分ももっと成長し、より面白い情報を子どもたちに伝えられるように頑張っていきます。貴重な経験、ありがとうございました!


Ichimasa